視力検査

先日、視力検査をした。検査官の示すCの文字の向きを答えるという定番のアレだ。検査官の挑戦めいた関門を次々と突破し、最下段の難関にたどり着いた。さすがに検査表最強の敵は手ごわい。人をおちょくっているかのような小ささだ。これをクリアすれば「視力2.0」の世界が待っている。
「視力2.0」といっても、この数値の示す実体は何なのだろう。我々はこの不可解な値のみを与えられて一喜一憂してはいないだろうか?実は専用の単位があるのではないか?最強の敵を前にした数秒間、いくつかの単位の候補が脳裏を駆けめぐった。

2.0クラス
「クラス」では少し範囲が広いニュアンスがある。小数点まで導入しているのだから恐らくもっと繊細な単位であるはずだ。

2.0センチオプティカルメートル
視力検査の「C」はこの単位の頭文字の「C」を取ったものだ。と、それっぽい感じがするだけで、全くのデタラメである。

2.0営業日
営業日とは、土・日・祝日など事業所の休業日を除く日を指すもので、視力検査とは何の関係もない。

2.0目がバイト
こんなものが正解だったら学校教育は崩壊するだろう。

Web2.0
もはや単位ですらないし、使用すると恥ずかしい気持ちになる。

2.0目力
「めりき」と読む。1馬力は馬一頭分の力なのだから、なるほど左右二つの目で2.0目力。これは説得力がありそうだ。

いや、説得力の問題ではない。Wikiによると、「視力は分単位で表した視角の逆数」で表されるらしい。
どうやら「目力」ではないようだ。適当に考えたダジャレ風の単位が、全世界共通で利用されるグローバルな単位であるはずがない。

思考を巡らせながらも、最強の敵を辛うじてクリアした。

「2.0ですね。」

やはり単位はなかった。
が、最終ラウンドを戦った感激で目頭が熱くなり、目上である検査官の目映いほどの目新しいメガネには目もくれず、目にも留まらぬ早さでその場を立ち去ったのだった。

2006.10.02 / n_a_r_y